半島を出よ

018a51f8.jpg 村上龍久々の新刊、「半島を出よ」。一気に読了。まあ基本筋とは別の枝葉の描写が多いのでその辺は適当にカットしたが、しかしぶあついのが2冊は少々辛かった。「愛と幻想のファシズム」+「昭和歌謡大全集」+「5分後の世界」+「共生虫」+「希望の国エクソダス」てな感じで、村上小説を寄せ集めた感じ。それ以上でもそれ以下でもないというのが残念なところで、先に挙げた5つの小説はそれぞれにインパクトのある作品だったのだが、「半島を出よ」はそれが薄い。直前に「亡国のイージス」やらああいう濃いい小説をよんでいたかもしれないが。
 北朝鮮の特殊部隊が福岡ドーム、そして福岡市を占拠し福岡は本州から隔離されてしまう。皇族の12万人の北朝鮮部隊が近づく中である集団が反撃を計画していた。というストーリー。北朝鮮特殊部隊のテロというのがそれほど非現実ではなくある程度の現実味を持ってしまう状況で、ああいう若者集団の反撃というのはかなりの非現実なわけで、そのへんが中途半端な印象を受けてしまう原因か。「愛と幻想のファシズム」だとその辺がずいぶんリアルな感じを受けていてインパクトがあったのだが。まあ著者本人のコメントだと、「昭和歌謡大全集」の続編的なところから始まった企画のようなのでしょうがないのだろうが。
 それにしても北朝鮮かどうかはともかく、テロによって国内が占拠された場合に日本はどう動くのだろうか、他国はどう動くのだろうか、いろいろ考えることはあるのだろう。