ラミブジンの作用機序と発癌

ラミブジンの作用機序と発癌

1. 逆転写酵素阻害
HBVはDNAウィルスながらその増殖過程でウィルスの核酸がDNAからRNA, RNAからDNAと転写される.従って増殖のためにはRNAからDNAへ転写を行う逆転写酵素(宿主細胞には存在しない)をウィルス自信が持っている必要がある.
HBV, HIV等のレトロウィルスの治療にはこのウィルスだけがもつ逆転写酵素がターゲットとなる.
• ラミブジンは核酸アナログでありHBVの逆転写酵素に取り込まれDNAの伸長を阻害する.

2. 肝細胞癌
• 感染細胞のウィルス抗原提示に対する細胞傷害性T細胞による破壊が起きると,細胞が再生する過程において遺伝子転写の誤りや酸化ストレスによる遺伝子の傷が生じ,加齢などによる遺伝子修復機能の低下により,その傷が蓄積し,genetic instabilityを増加させ癌化を促進する.
HBVのDNAは核内で二本鎖DNAとして存在し,高率に宿主のDNAにintegrationする.X遺伝子を含む領域が高頻度に組み込まれて翻訳されるX蛋白は細胞内のシグナル伝達を通じて発癌遺伝子を誘導したり,ミトコンドリアを傷害することによって酸化ストレスを増加させる細胞傷害活性を有する.


BIO Clinica 21(5),2006(425) 45