Minority Report

Minority Report
 2003年になるかならないところで話題になったニュースの一つはクローンベイビーの誕生だろうか。もっとも本物かどうかまだ不明だがとりあえず、去年の今頃では予想できなかったようなニュースだろう。科学技術は進歩していると改めて思わされるが、果たして数十年前に予想していたような西暦2000年台の未来都市の姿に近づいているのだろうか。SF小説や漫画に描かれていたような将来像からはかなり遅れているような気がする。
 "Minority Report"の舞台は2050年頃のようだ。果たして本当に後50年ぐらいでこれだけ世界が変わるのか疑わしいところはあるが、しかしこの細かい未来生活の描写には驚かされる。圧倒的なSFXでほとんどアニメじゃないかと思いながら見ていたが。この点だけはさすがはスピルバーグということだろう。
 2050年の未来では犯罪はプレコグ(未来認知)により予測され、犯罪が発生する前に警察により防がれる。トムクルーズ演じる警察がこの辺の仕事を行っている。この辺の基本的なアイデアと登場人物数名の名前は原作からとっているようだが、ストーリーは原作とは全然ちがう。事前に原作を読んでいて、短編小説としては面白いが、映画にするとなるとかなり話をふくらませないといけないし、どう映画化するのかなと思っていたが、これだけ全く話をかえるとは思わなかった。
 原作だと"minority report"というのにちゃんとした意味があるのだが、この映画だとこのタイトルは意味がないだろう。もうちょっとわかりやすいタイトルにすればよかったのではないか。この辺の作り替えでフィリップKディックの世界観からは離れてしまった感じがある。映画ではやはり悪い黒幕がいて(最初からみえみえなのがつらいところだが)、こいつを倒せばいい。そして最後はハッピーエンドとなっているが、この辺はスピルバーグ的で、単純明快である。原作のディックの世界にはどこかくらい陰というか苦さがあって、これが魅力ともなっているのだが。この辺の暗さを取り入れるとブレードランナー(DC版)のような雰囲気になったかもしれないが、それをこの監督に求めるのは筋違いだろう。
 プレコグの一人が”あなたには未来への選択肢があるのよ”というあたりはメッセージなのでしょうか。にしてもプレコグ3人は最後は幸せに暮らしましたとさ、という終わり方はあまりといえばあまりである。