The Insider

2002/12/31
The Insider
 Time誌が選ぶ今年の人(person of the year 200X)は毎年年末の恒例になっているのだろうか。なぜ日本のマスコミがこれを例年紹介するかわからないところもあるが、それはさておき、今年は3名の女性が選ばれている。今年全米を揺るがせた不正事件(WorldCom, Enron , FBI)のwhistle-blower達だ。3名とも女性だったというのは象徴的であるが、いまや体制の不正と腐敗を暴くリスクをとれるのは女性しかいないのだろうか。彼女たちが不正を告発するまでの心理的な経緯には興味を感じる。
 さて"The insider"、アルパチーノとラッセルクロウ競演の告発ものである。アルパチーノ演じるテレビディレクターはタバコに関する取材をする中で、タバコメーカーの研究者で首を切られたばかりのラッセルクロウを知り、かれが重要な情報を持っていることに感づく。説得した結果、TV番組に出演して告発することになるが、放映を巡って様々な駆け引きが続くことになる。
 自分はいい金をもらって、そのおかげで家族を養えて、おまけに秘密保持契約もあるから、告発はできないと言うラッセルクロウの姿は、何か仕事をしている人なら容易に理解できる心理だろう。このあたりの悩む姿をラッセルクロウはうまく演じきっている。またテレビディレクターというちょっとうさんくさい立ち回りをアルパチーノが演じているが、こちらはちょっとかっこよすぎというところか。だいたいアルパチーノという人の演技はワンパターンで一本調子のような気がする。ここが唯一残念だったところで、もう少し癖のあるケビンスペイシーあたりが演じていればまた少し違った印象の映画になったかもしれない。とはいえそれではLA confidentialになってしまうが。
 ところでラッセルクロウ演じる研究者は日本語がしゃべれて、高校でも日本語を教えるという設定。実際「お姉さん、シシャモと天ぷら」と和食レストランで注文するシーンがある。この映画、ノンフィクションに近いようだから、この研究者は日本企業(JT?)との関わりもあったのだろうか。タバコに比較的寛容なこの日本で、この映画は当時うけたんだろうか。