私が愛した官僚たち


私が愛した官僚たち
  • 著:横田 由美子
  • 出版社:講談社
  • 定価:1470円
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フリーライター横田由美子氏の発の著作.霞ヶ関の官僚達の実体にせまる.

普段の生活では官僚さんと接することはまずないのですが,一つ思い出すのは,某大学のいい年をした教授,普段は非常に強面でえらそうな先生が,霞ヶ関でなにかの説明をしてきたあとに,自分の子供ぐらいの若い役人にえらそうにされて,,,というぼやきだ.いったいどんな人種なんだかと思ったりもしたが,おそらくそつなく仕事のできるスマートとということばがぴったりの人種なのだろう.それが意味があるかどうかは別として.

で,この著作,財務,経産,外務などの若手官僚への密着取材が元になっている.結構本音が聞けているのではないか.よく取材できているのではないかな.どんな人間が官僚になっているのか少しはわかる気がする.真実は別として.

自己実現のために職業を選ぶとするのならば,かれらの実現したい自己とは,この国を動かす権力を手に入れたいという点なのだろうか.現実は,官僚は所詮政策を作るだけで,政治家に実現させることができなければ無駄に終わってしまう.そんな現実の不条理さに嫌気をさしてやめてしまう若手官僚が多いのもしごく当然と思われる.昔と違って若手官僚の離職率も急増中だとか.自己を殺して組織の中で階段を登っていくなんて気の長いこと,今の優秀な若手がするわけはなし.で,その出口が一つは政治家で,あとはいろいろな民間事業.いずれにしても優秀であり,かつ現実と付きあることのできるコミュニケーション能力に長けた人でなければ生き残れないのだろう.本書では政治家に転身した元官僚達のその後にも多くのページが割かれており,その辺の各人のご苦労がわかり興味深い.

霞ヶ関についての本となるとどうしても批判的な内容になりがちだが,本書はそうではなく,官僚ってどんな人?という基本的なところを中心に描いている.霞ヶ関の中から,外から複数の角度からの情報がはいっており,官僚についてのイメージをどう描くかは後は読者が考えなければならない.

著者の初著作ということもあり後書きで自分の身の上話も載っている.横田氏の思い入れが詰まった一冊である.